武田信玄が、駿河(静岡)の今川義元と会談したさいに、「富士山は、甲斐(山梨)から眺めるほうが風情ある」と述べ、「駿河から見る富士山には身ぐるみがなく、男の楽しみが半減する」と語ったというが、御意である。
つまり、山梨側の富士には、下方部に山々の衣があるが、静岡側の富士山は丸裸だと。
とは言っても、新年に富士山を欠かすことはできない。ましてや、初夢に見ると縁起がいいといわれる、「一富士、二鷹、三なすび」
初夢に見られなかったとしても、鷹の山に登って富士を見る。ザックに茄子を忍ばせておけば、「一富士、二鷹、三なすび」。その山が、今日登る日本200百名山の愛鷹連峰の最高峰・越前岳である。
だが、なぜこの組み合わせなのだろうか。 これには、 駿河の国で高いものの説がある。
富士山、愛鷹山、そして茄子の値段。今でこそ茄子は1年中食べられるが、もともとは夏が旬の野菜。江戸時代には、冬に夏の食べ物である茄子を手に入れるのは至難の業だったと。おっと、横道にそれたようだ。本道にもどろう。静岡県の裾野市から見る富士には、おなかから頭のてっぺんまで白い衣装につつまれていた。
東名高速道から越前岳の登山口、十里木峠に続く道は十里木街道とよばれ、駿河、相模、甲斐と結ぶ主要な道であった。古くは源頼朝が、10数万騎をつれて巻狩り・動物狩りをおこなったところと知られ、富士の広大な裾野が駿河湾までに伸びている。
その富士に対峙する愛鷹連峰の越前岳には、しっかりと雪がへばりついていた。ために、「すみませ~ん。バスの中でスパッツを着装してくださ~い」と。ところが、あとでいわれて言葉をうしなった。バス中のスパッツ着装で、「バス酔い」になってしまったというのだ。おう吐する人、おう吐をこらえて、着いたトイレに駆け込む人など…。
この場をおかりしてお詫びを申し上げます。すみませんでした。
そんなことも知らずに、雪道に足を踏み入れて後方をふりかえると、頭から足先まで現にした丸裸の富士山がデーン。だが、山梨側から見る富士山とちがったおもむきがある。山梨側の富士は全山雪におおわれているが、静岡側の富士には、強風で雪が積もらない黒いところと、雪が積もったところ。斑状の富士が聳えているのだ。言葉でうまく言いあらわせないが、秀麗とよぶにふさわしい、霊験あらたかな富士山、と。
特に、歩きはじめて15分のところにある富士見台は、富士山の写真家と知られる岡田紅陽が、ここで撮った富士山の写真が、昭和13年発行の五十銭紙幣の図案に採用されている。ちなみに、富士山を描いたお金は、五百円券(山梨県の雁ガ腹摺山から見た富士山)五千円券と千円券は岡田紅陽が本栖湖から撮影した「春の湖畔 本栖湖」をもとにした富士山がデザインされていて、古くは、国立銀行紙幣五円券(明治6年発行)がある。こうして富士山は、私たち日本人の心のよりどころとして、またお金となって、私たちのふところ奥までに浸みいっているのである。
進む雪道は、水分の少ないパウダー雪に変わって、サクッ、サクッと、優しい音色が響き、心も膝も軽やか。登山道のまわりにはツツジの木々が生い茂っていて、初夏に訪れたい。また、頂上直下の樹木に霧氷が映えていて、まばゆいばかりにオトギの銀世界が待ちかまえていた。さらに帰路、「裾野市ヘルシーパーク」の湯船の窓には、富士山が大きく映えていて、冷えきった体を癒しながら、世界遺産の富士山をひとり占めにするお年玉もあって、「こりゃあ、新年から縁起がいいわい」の新年山行だった。
括りに、豊島、松島、藤井さんのサポートで、山行参加者全員が、無事に降りてこられたことにお礼をいたします。
そして、遅くなりましたが、会員みなさまのご健勝と安全山行をご祈念し、旧年にかわらぬご指導、ご鞭撻をお寄せ下さいますよう役員会を代表してお願い申し上げます。
遊友ハイキングクラブ会長 伊藤 松雄
1月12日(日)、今年最初の山行「越前岳」に参加しました。越前岳は、静岡県裾野市にある標高1,504.2メートルの山で、富士山の南に位置する愛鷹連峰(山塊)の最高峰です。
今回の参加者は20名、運転手はいつもの舘山さんです。春日部5:50発で私は6:00にせんげん台から乗車です。途中のバスの中から日の出を見ながら首都高、東名高速を通って8:30に東名高速の裾野ICに着きました。この間に昨年1年間に行った12回の山行写真のDVDを放映し、皆さんに喜んで頂いて、作成した甲斐がありました。高速を降りてからは一般道の24号線、469号線を通って9:00に十里木高原駐車場に到着です。目の前に富士山、反対側に越前岳、そして駐車場には雪が積もっておりました。
登山支度をし、藤井さんの音頭で準備体操を行って9:20に登山開始です。駐車場の標高は880mです。今日の登山は標高差が約630m、距離が約5.5㎞です。富士山を背にして雪を踏みしめながら15分ほど登ると十里木高原展望台(標高960m)に着きました。富士山は見えているのですが、雲が邪魔をしていてなかなか姿全体が現れません。そんな富士山を眺めながらしばらく登って、積雪が多くなったところでアイゼンを装着しました。越前岳の頂上に近づくにつれ雪の量も多くなりました。20cm位は積もっていたかと思います。そして11:25に越前岳の頂上に到着しました。登ってくる途中でも登山者とすれ違いましたが、頂上には10数人の登山者がおりました。頂上の見晴らしは良くありませんでした。勿論、富士山も見えません。立ったままお昼を食べ、記念写真を撮って11:50に下山開始です。下山は上りと同じ道を引き返します。頂上で冷えた身体が温まるまでしばらくかかりました。特に手の指先が冷たくてたまりませんでした。下山は正面に富士山を眺めながらおりますが、あまり富士山に気を取られていると木の枝に頭をあててしまいます。木の枝に頭を打った方はおられたようですが、転んだ方は見かけませんでした。アイゼンのお蔭でしょうか。下山は13:30でした。
この後は、すその美人の湯「ヘルシーパーク裾野」(¥500)に向かいました。14:00~15:30まで入浴とビールで疲れをとりました。露天風呂からは富士山が眺められ、最高の気分でした。後はコンビニで買い出しをして、バスの中で宴会です。道路は、事故渋滞があったものの順調に進み、岩槻IC経由で18:50に春日部到着です。今日の会計係は知名さんと私でしたが、無事に務めをはたしました。せんげん台組(7名)は、例によって中華食堂で反省会です。たっぷり反省をして帰宅が21:30でした。